皆さんこんにちは。双六問屋です。
見に来てくださりありがとうございます。
11月11日に発売された、木下龍也さんの「あなたのための短歌集」を読んだので感想を書きます。
また、前作「天才による凡人のための短歌教室」もぜひあわせて読んでほしいので、感想と体験談を書きます。
2022年9月27日 追記 木下龍也さんが10月2日の情熱大陸に出演されるそうです!!!
私はもう録画予約しました!!すっごく楽しみです!!
そして第三歌集も楽しみすぎます。
追記はここまでです。
「あなたのための短歌集」レビューと、「あなたのための短歌展」についてはこちらから始まります。ぜひごらんください。
「あなたのための短歌集」 紹介
著者の木下さんは通販サイト BASEで短歌の販売を行っています。
購入者は「お題」を木下さんにメールで送り、木下さんはお題をもとに、世界でただ1つの「あなたのための短歌」を作って購入者へ届けます。その歌はどこにも発表されず、作者の木下さん自身も記録に残しません。購入者のみ、手元に残すことができます。(購入者自身がSNSなどで発表することは自由)
そうやって作られた「あなたのための短歌」は約4年間で700首。
この本は、これまでの購入者の方にお願いし、提供してもらった100首が収められています。
この本の出版にあたり、木下さんはすでに短歌の作成代は購入者からもらっているので、印税を受け取らないことを決めました。出版社のナナロク社はその印税額で、「歌集」を購入し、学校や施設に贈呈するそうです。
プロジェクトについて詳しくはこちら
「あなたのための短歌集」 感想
まずは短歌の定義を、木下さんの本から引用します。
「天才による凡人のための短歌教室」木下龍也さん著
五七五七七のリズムで読める短い一行の詩です。ルールは 五七五七七 であること、それだけです。季語や必要ありませんし、古典で習った「けり」や「たり」などの文語を使う必要もありません。
「あなたのための短歌集」 の構成は、ごくシンプルです。
見開き右ページには購入者からもらった「お題」が、左ページには木下さんが作った短歌が書かれています。
お題は本当に様々です。「家族が大好きで失うことが怖い」「頑張らなくてもいいよと思える歌がほしい」「友人には言えない恋をしています。踏ん切りをつけられる短歌を」「たこ焼き」・・・・。
名前にまつわる歌もいくつかあります。
名前って人生で一番最初に人からもらえるプレゼントですよね。しかもずっと一緒に生きてきたし、これからも続いていくものだから、名前に短歌作ってもらえるのってうらやましい。
あと新生活を迎えるにあたって、のお題もありました。人生の岐路で書いてもらった短歌、忘れられないでしょうね。
恋愛にまつわる短歌も色々あります。
私は52首目の、「長い間、片思いしていた相手がいます。もう前に進もうと決めました。背中を押してくれる短歌をください」というお題にこたえた短歌がとても胸に刺さりました。
恋愛に捧げた月日を思い出し、長い時間が経っていたんだと気がついた時。
振り返って、目に入るもの。
この短歌を聞いたら、決心できそう。
犬好きに読んでほしい
犬についての歌もいくつかありました。犬好きの方、ぜひ読んでほしいです。
私は今は飼っていませんが犬好きなので(動物全般好き)、ぐっときてしまいました。
お題としては「犬」ですが、もちろん自分が飼っている「猫」に読みかえてもいいでしょう。
ハムスターについてのお題もあります。
犬にまつわる短歌で、私が一番好きな歌を1つ紹介します。
お題
お題は「幸せな犬」です。犬たちと暮らしてきた実家を出てから、犬を飼って、世界一幸せにすることが、私の人生の目標でした。ちょうどこれを書いているいまは、犬を迎える3日前です。短歌
人間へ 食べものよりもきみが好きな日もたまにはあるよ。 犬より
もう、舌を出して、目をキラキラさせて、ハッハッって言ってる犬の顔が思い浮かびませんか?
いつも美味しいものがないか探している犬が、食べものよりも私を好きって思ってくれてるのだとしたら。
それが「たまに」でもすっごく嬉しい。「いつも」なんて望まない。そして言わなくてもいいのに「たまに」って言っちゃう犬の正直さが大好き。
私は犬を飼ってないのに、大きな白い犬がこちらに向かってくる姿を想像して胸が熱くなってしまいました。
他にも色んな歌があります。動物を飼っている方、読んでみてください。
31文字の自由
今の時代は、受け取る側が想像しやすい、細かくてリアルな描写が求められている感じがします。
歌詞では、商品名を出してリアルさを増す。
バラエティで面白いことを言った時はテロップも変な形に歪ませる。
You Tubeをきっかけに広まった動画というフォーマットは、映像と音声どちらも使って圧倒的な情報量を受け手側に送り込んでくれます。
行間を読ませるのではなく、状況説明をする方がウケがいい時代。
それに対して、短歌は31文字という文字数。とても少ない。少ないけれど、その余白にこそ読んだ人の想像や経験を重ねあわせるすきまがある。誰かに作った短歌なのに、私の心にも響くのは、想像力をまったく邪魔しない自由さが短歌にあるからです。
あと、31文字って昔から日本人が慣れているリズムだから覚えやすくていいですよね。
お守りみたいに心の片隅に置いといて、いつでも好きな時に呟ける。
普段読書はしない、活字が苦手な私の友人も短歌集を読むのは楽しいと言っていました。
私の人生を変えてくれた木下さんの短歌。「あなたのための短歌展」
「あなたのための短歌集」 を出版するきっかけになったのは、2020年9月東京 高円寺で行われた「あなたのための短歌展」だと書いてありました。
私はこの短歌展を見に行きました。
開催期間中、13日間毎日2名の依頼者が、木下さんにオンラインか対面でお題を出し、それを受けた木下さんが1時間で短歌を作ります。
そのお題と短歌はギャラリー内に展示されます。
その時の様子はこんな感じ。
コロナ禍で感染対策を取りながら開催されていました。
同時開催された七野ワビせんさんの「今日の漫画展」も素晴らしかったです。
お題と短歌はこんなふうに貼り出してありました。
この中の1つが、私の人生を変えてくれた短歌です。
お題
変化を恐れることをやめたい。短歌
2020年9月4日午後5時
どこへでも行けるあなたの舟なのに動かないから棺に見える
マスクの下で本当に声が出ました。「あっ」か「うっ」かそういう声が。
足元から頭までうおおおおと何かが駆け上がってくる感じ。本当に衝撃を受けました。
コロナ禍でずっとステイホームしていたことは何も後悔していません。
ただ、それを言い訳にして何も動かなかった自分がいたことも確かです。
コロナだけではありません。
年齢とか、経済的なこととか、世間体とか、そういうの全部ひっくるめて何もしないことを選んでいる自分がいました。
宇宙空間のような暗い闇にぽっかりと浮かぶ白い棺を想像してしまい「棺はいやだ!!!死にたくない!!」と本気で思いました。
そこからは、コロナ禍ながらも動けることは動きました。
だってちょっとめんどくさくてやめようかなと思っても、
「どこへでも行けるあなたの舟なのに」と上の句が浮かんでしまうんです。「動かないから棺に見える!」と言いながら取り掛かる、ということが本当に何度もありました。
以前ブログに書いた、路上ライブを撮影した話も、まさにこの短歌があったからできた体験です。
立派なことじゃなくても、大きいことじゃなくても、面白そうなことがあったらとりあえずやってみてもいい。好奇心の火を消すのは嫌だと再認識できたのはこの短歌に出会ったからです。三日坊主になったとしてもゼロよりはずっといい。自分の舟は自分が運転する。棺にはならない。
私が一番嫌いな質問は「それやって何になるの?」です。「面白そうだからやる」、これだけ。
ちなみにこのブログを立ち上げる時も、何回もこの短歌をつぶやきました。
この短歌は「天才による凡人のための短歌教室」に収録されています
この展覧会の時に貼り出されていた短歌は、全てこの本に収められています。
また、この本には短歌のルール、作り方、歌人として生きていく心構えなどが書かれています。
歌人自らが、短歌作成の手の内をかなり具体的に見せてくれる本です。
短歌を作る人には勉強になりますし、また短歌を作らない人でも楽しめます。
「耳を傾けるべきは他人の自慢話ではなく自分の胸のうちだ。群れるな。」
「何を言われたってクソリプだと思って受け流そう。現実世界にはミュートやブロック機能がないから不便ではあるが。何か言ってくる歌人のほとんどは自作がうまくいってない奴だから気にしなくていい。」
ここに書いてある心構えは、どの道にも通じます。
「あなたのための短歌集」 を読んだ方は、「天才による凡人のための短歌教室」も読むことをおすすめします。
まとめ 短歌って楽しい
木下さんの他の歌集もおすすめなのですが、長くなるのでまた別の機会にご紹介したいと思います。
「天才による凡人のための短歌教室」の中で、木下さんがおすすめする歌集を紹介してくれているのでそこから何冊か購入しました。読むのが楽しみです。
皆さんもおすすめの歌集があったらコメント欄で教えてください。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
それではまた。双六問屋でした。
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