【ネタバレ注意】桐野夏生著「砂に埋もれる犬」を読んだら読書トリップできたので感想を言い合いたいです。

ブックレビュー

こんにちは、双六問屋です。
見に来てくださりありがとうございます。

10月7日に発売された桐野夏生さんの新刊、「砂に埋もれる犬」を読みました。

読んでいて辛い。なのに読むのを止めることができない。
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この内容なので言いにくいのですが、めちゃくちゃ面白かったし、色々と思うことがあるので、ネタバレありで感想を書こうと思います。
もう一度言います、 ネタバレあり です。まだ詳細を知りたくない方は、読み終わってからこのブログに戻ってきてくださるととても嬉しいです。

また、この本、及び、このレビューにはネグレクトや暴力など虐待の描写が出てきます。
お気をつけください。

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砂に埋もれる犬 あらすじ(少し詳しめに)

単行本の帯に記載されているあらすじはこちら。
「貧困と虐待の連鎖
母親という牢獄から抜け出した少年は女たちへの憎悪を加速させた。ジャンルを超えて文芸界をリードする著者の新たな傑作。予定調和を打ち砕く圧倒的リアリズム」

せっかくなので、ここではもうすこし具体的なあらすじを書きます。
ラストは書きませんが、物語の重要なネタバレを含みます。ご注意ください。

主人公は12歳の少年、優真。手続きを怠った母のせいで小学校には通っていない。
父親違いの4歳の弟、篤人、シングルマザーの亜紀、亜紀の彼氏である北斗と4人暮らし。遊ぶことを止められない亜紀と北斗にとって、二人の息子は邪魔以外の何者でもない。息子が待つ家に帰りたくない亜紀と北斗は、わずかな食料だけを買い与え、自分たちはゲームセンターやラブホテルで連日連夜遊んでいる。

優真は自分の父親の記憶はない。篤人の父親は暴力がひどかった。北斗は凶暴ではないが意地悪だ。
マヨネーズとケチャップもなめ尽くし、飢えに耐えられなくなった優真はいつも行くコンビニで「要らなくなったお弁当をください」と頼む。対応したコンビニの店長、目加田こそが、この先の優真の人生を変える人物だった。

目加田の家には、脳性麻痺で寝たきりの20歳の娘、恵と、妻の洋子がいる。

ある日、北斗に殴られたケガがきっかけで、優真が虐待されていることが明るみに出る。
施設に入る優真。警察がくるのを恐れて亜紀は篤人を連れて北斗の家を飛び出す。

娘、恵の死後、目加田と妻は優真を里子として施設から迎え入れることを決意する。
目加田の家で暖かく迎え入れられた優真。ここには飢えも寒さも暴力もない。

しかし、ネグレクトと虐待の家庭で育った優真には残酷なことばかりが起きていく。
勉強の楽しみを一瞬知ったかと思えばまた落ちていく。食事のマナーを知らないことを責め立てられる。やっと手にしたスマホだが、誰の連絡先も聞けず、一人の友達もできない。

優真は、美しい同級生、花梨に心を惹かれる。花梨は、偶然にもかつて小学生の優真が狂おしい程憧れ、ある物を盗みに入ってしまった家庭の娘だった。
花梨に近づきたい優真。だが話しかける方法すらわからない。
抑えることのできない性衝動が、思春期の優真を飲み込みはじめる。

鬱屈とした希望のない日が続く。
母親から愛されたことのない優真は、次第に女への憧れと憎悪を増していき、自分でもコントロールできなくなっていく・・・・・

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砂に埋もれる犬 感想

この内容なので言い辛いのですが、めちゃくちゃ面白かったです。

私にとっての桐野夏生作品のイメージ、「落石」

私にとっての桐野夏生作品は、
山のてっぺんに大きな岩があって、最初は「あれ?大丈夫かな?」と感じる。
→しばらくして見ると、さっきより少し揺れているように見える・・。ゴゴゴ・・・と聞こえる気がする。
「まさか落ちないよね・・・・?」と思った次の瞬間には山の斜面を岩が轟音とともに転げ落ちている
物語に巻き込まれてしまい逃げられない、そんなイメージです。

今回の「砂に埋もれる犬」は、
桐野夏生節、全開!!
読んでて嫌なことばっかり起こる。もう嫌だ、やめて。でも先が知りたい。止めたいのに読むの止められない。

っていう感じでした。
桐野さんの作品って嫌な気持ちになる描写が、細かく丁寧に書かれているから想像できすぎて胸が苦しくなってしまう。あまりにもリアルだから「絶対桐野夏生さん自身性格が悪いんじゃないか」と思ってしまうくらい。(後述しますが、きっと悪くないです。でもそう思わせるくらいリアルですごい)

この本の中でも、胸が潰れそうになるくらい嫌な大人の描写がいっぱいあります。
どうして優真はこんなに運命と大人に振られ続けられなければいけないんだろう。

篤人の父親からひどい暴力を受けて失禁してしまった優真が、性器をライターであぶられそうになるシーン。
12歳の優真が、北斗から「亜紀は、篤人の方が、断然可愛いってよ」とからかわれるシーン。
里親になった目加田と妻の洋子が、優真に向かって何度も「友達できた?」と聞くシーン。
あの、ランドセルのシーン。

もう、ずーっと嫌な気持ち。

優真が自分の父親を立派な男性だったはずと妄想するところは映画JOKERと通じる部分を感じました。JOKERは母親から吹き込まれていたけど、「俺がこんなふうになってしまったのはろくでもない母親のせいだ。きっと父親はすごいはず」と一縷の望みをかけたんでしょう。

そして、ラスト目前。花梨の家に入ったことを、美桜たちに暴かれるシーン。
私はここで一回本閉じてしまいました。怖すぎて。絶対起きてほしくないことがこれから起こるんだなと思うと耐えられなかったんです。

時間が経つのを忘れてしまうくらい本の世界にずっぽり入っていくことを、私は「読書トリップ」と呼んでいるのですが、「砂に埋もれる犬」はまさに読書トリップさせてくれる本でした。

誰の悪意が一番きつかったか?

このブログを読んでくださっている方は、読後の方も多いと思うので聞きたいのですが、どの悪意が読んでて辛かったですか?
ちなみにウィキペディアによる悪意の定義は

悪意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日常用語としての悪意(あくい)とは、相手にとって害のあることを理解した上で行動すること、他人や物事に対していだく悪い感情、または見方のことである。
また、相手のよくない結果を望む、心の中に生じる意思を意味する。対義語の善意は、相手に良い結果を導こうとして行為を行う気持ちを指す。

だそうです。

どれも辛かったけど、私は目加田がきつかったです。
いや、きっと目加田は「悪意」ではない。真逆の「善意」の人。ただこの正義面した善意がものすごくきつい。正しく生きて、努力して、それが報われると思っている人の話し方。うまくいってない人に「努力が足りない」と平気で言えるタイプの人。

たとえば、
娘、恵の介護で疲れている妻、洋子に対して「もっと頑張らなければいけないよ」と説教する。「もうこれ以上頑張れない」と答える洋子に「甘えるな」と言い切る。

クリスマスの日、目加田がコンビニから持ち帰ってきたケーキを、スポンジケーキが苦手な優真は残してしまう。それに対して長々と目加田は説教を始める。
嫌いなら切る前に言え、これは躾(しつけ)だからはっきり言う、こんな態度をとったら相手は君を失礼だと思うだろう、気遣いというものが人間社会のルールだ・・・

もうやめてーーーーー!!!うんざり!!!って叫びたくなります。
でもきっとこれ、本気で、正義と思って言ってるんですよね。
だって、躾って言ってるし。でも虐待する人も必ず言いますよね「躾だ」って。
きっと目加田、「どう思う?」って聞いてくるけど、その人の中の正解は決まってて、それ言わない限りこっちの意見は間違いと判断するやつだと思う。予想だけど。

もちろん、亜紀とか北斗とかスズキとかもきつい。全員きついし、すごく理不尽で嫌になる。でも目加田みたいに実際に正しく生きてる人から正論で責め立てられると「私はダメな人間なんだ!努力が足りない!」と自分で自分のことを責めて辛くなってしまう。

自分でどうしようもないことってたくさんあるでしょう。特に優真みたいな子どもは何も悪くない。
知らないって、悪じゃないし。

「人に迷惑をかけるな」「他人を頼るな」と言われ続ける日本社会で、親ガチャがはずれた子どもはどうやって生きていったらいいんだろう。
「親ガチャ」って言葉さえも使ったらいけないって、親ガチャに当たった人たちが言う。その正義にどれだけ苦しめられればいいんだろう。

そしてこれは、ろくでなしの母親、亜紀にも言えること。亜紀は悪い。でも誰でも亜紀になる可能性はあることは絶対覚えておきたい。
もし、誰かが亜紀に福祉を紹介していたらどうだった?漢字を読めない亜紀のことを馬鹿にせずに1つずつ書類を一緒に片付けていたら?

悲惨なニュースが起こる度「あんなことするなんて」という人は多いですよね。私はそれを聞くと「この人は『向こう側』がとても遠いと思っているんだ」と感じます。誰だって『向こう側』には簡単にいけるのに。

自助の世界はもう限界なんだと思います。
むしろ「困った時は人に迷惑かけていい。他の人が困ってる時は自分が助けようね」って伝えていった方がいい。「助けて」と叫んでいいとみんなわかってほしい。

運命に振り回され大人に振られ続けた優真を、私は正義を説いて責めることができません。

この本のラストシーンを読んでいる間、私はずっと新妻望さんの歌を思い出していました。
そのタイトルはずばり「ナイフ」。
よかったら聴いてみてください。
Apple Music

Spotify

他にもお好きなサブスクから聴けます。
https://linkco.re/TT0hBheZ?lang=ja

新妻さんについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。


最後に 桐野夏生さんと武田砂鉄さんとの対談。「もっと怒れ」

「砂に埋もれる犬」刊行後、桐野夏生さんと、ライターの武田砂鉄さんがラジオで対談されていました。
その中で、ちょうど桐野さんご自身が「自助」について話していました。おお!同意見!
また、「もっと怒っていい。人のせいにしろ」「恥について」の話がとてもよかったです。
このブログの最初で「こんな物語を思いつく桐野さん、性格悪いのでは」と書きましたが、全然性格悪くありませんでした。すみません。

この対談の冒頭で桐野さんが「『路上のX』で女の子を書いたから、男の子を書かないといけないと思った」とお話されています。
路上のX!!!これもバリバリの読書トリップ本!!私はこの本をモスバーガーで読んでて、本当にいつの間にか閉店時間になっててびっくりしました。めちゃくちゃ面白いです。どうやって取材したの?って思うくらい、リアルな女子高生なんです。おすすめです。

こちらは女子高生たちが主人公。桐野節炸裂。
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売春する女子高生、虐待される中学生、不倫する人妻、無人島で生き残る女、情けないサラリーマン・・・桐野さんてなんでこんなに色んな物語が書けるんだろう。


桐野さんと武田砂鉄さんの対談については、公式サイトがYou Tubeに音源をアップしています。
時間指定して、桐野さん登場部分から聴けるようにしました。

決して「読後感さわやか!」という小説ではありませんが、色々考えるきっかけになりますし、なにより一気に読ませてくれます。「砂に埋もれる犬」おすすめです。

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ちなみにこの「砂に埋もれる犬」というタイトル。ゴヤが描いた絵のタイトルです。
桐野さんが暗いタイトルを考えている時に、たまたまゴヤの絵が目に入ったそうで、「救いようがない」と思い、このタイトルにしたそうです。

その絵がこちら。(音は出ません。血などもなく、肩まで砂に埋められた悲しそうな犬の絵です)
わーーーー!救いようがない!!!
これを選ぶ桐野さんのセンスが、すごい。怖いほどすごい。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
桐野夏生作品のおすすめや、読書トリップできる本をご存知の方がいらっしゃったら、ぜひコメントで教えてください。

それではまた。双六問屋でした。


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