皆さんこんにちは。双六問屋です。
読みに来てくださりありがとうございます。
12月3日に発売されたDVD「森達也テレビドキュメンタリー集」を見ています。
オウム真理教を扱った「A」「A2」、佐村河内守さんの密着ドキュメンタリー「FAKE」などで知られる森達也監督。(この3本もすごく面白かったのでいつかブログに書きたい)
森監督がこれまでに撮影した、なかなか今のテレビでは再放送しにくそうなドキュメンタリー4本からなる、この作品集。収録されている番組は1992年から1999年に放送されたものです。
4本のテーマは「小人プロレス」「超能力」「動物実験」「放送禁止歌」。
ものすごいパワーワードばかり。
予約開始初日に予約しました。なぜなら発売禁止処分になるかもと思ったからです。
レビューしたらめちゃくちゃ長文になりそうなので、一旦ミゼットプロレス編を書きます。
いや長文になるとは思っていました、 「A」「A2」「FAKE」 、どれも見た後いろんなことを考えたので。今回もそうでしたね・・・。これがテレビで放送されたなんて信じられない。
見た方、ぜひコメントで感想を教えてください!他の方がどう感じたか知りたいです。
ミゼットプロレス伝説~小さな巨人たち~(1992年放送) 内容
主に3つのテーマから成り立っていて、それぞれが絡み合っています。
①ミゼットプロレス(小人プロレス)のたった二人だけのレスラー、リトルフランキーさん、角掛ひとしさんをメインに語られる小人プロレスの歴史、女子プロレスとの関係、現在(1992年時点)
②その二人のもとに「一度逃げ出したがやっぱりもう一度やらせてほしい」と戻ってきたコブッチャーさん(後のミスター・ブッタマン)の復帰戦への道。(タッグマッチ。リトル・タイガー&リトル・フランキーVS ミスター ・ブッタマン & 角掛ひとし 戦)
③小人プロレス、花形時代を支えたOB達の現在(プリティ・アトムさん、隼大五郎さん、天草海坊主さんなどの1992年時点での近況)
この3つを、それぞれの選手にスポットを当てながら丹念に紡いでいくドキュメンタリーです。
私、このドキュメンタリー見たら暗い気持ちになるかと思っていたのですが、全く逆でした。
すごく笑ったし、胸が熱くなるシーンもありました。全然暗くなかった!
私の感想と疑問 パラリンピックは世界の祭典で、ミゼットプロレスは放送禁止?
私は、プロレスやスポーツに全然詳しくなくて、今回初めてちゃんとミゼットプロレスを見ました。
全日本女子プロレスの試合の時に、一緒に行われてたんですね。
マッハ文朱さんいわく、「すごく真剣な女子プロの試合があって、その後に小人さんのプロレスがあってお客さんの空気を一度ほっとさせてくれるんです。だからこそ、その後の試合をまたお客さんたちが真剣に見てくれる」とのこと。
実際この映像の中でも、全然盛り上がっていない新人さんの試合直後、小人さんたちが試合を始めるとお客さんが沸きに沸いていました。すごく笑わせてる!さっきまであんな静かだったのに!
ミゼットプロレス、めちゃくちゃ見ていて面白い。身体能力がすごい!フリとオチがすごくきいてる。
あれだけ体鍛えているからこそできるショーだというのがすごくよくわかります。
素朴な疑問なんですが、
パラリンピックは感動の祭典で世界中で放送されるのに、ミゼットプロレスは放送禁止なのはなぜですか?
私には本当にわからない。なんで?
笑いものにしたらダメっていうけど、でもすごい面白くて本人たちも笑わせようと思ってやってるのになんで笑うのがダメなの?
善意からの排除
全日本女子プロレスを旗揚げし、ミゼットプロレスともずっと関わりがあった松永さんも「クレームがきたことは1件もない」と話しています。
DVDの付録についている長与千種さんと森監督の対談で、森監督が話している「目のやり場に困る」というのが、テレビで放送されなくなった答えなのかもしれません。
この対談も本当に素晴らしいから、ぜひ多くの人に読んでほしいです。
少しだけ内容を紹介します。
小人プロレスの方たちは「自分たちは小さいからテレビに出れない。じゃあ大きいのはなんで出れるの?」とよく言っていたそうです。小人は放送禁止なのになぜジャイアント馬場はテレビに出れるのか、これに対して森監督はこう推察します。
要するに多くの人は、ハンディキャップを持つ人に対してこっそり優越感的なものを持つから、逆に後ろめたい気分になって不可視の領域に置こうとする。だって自分より大きい人に対しては少なくとも優越感を持てないから・・・
森監督の言葉 、森達也テレビドキュメンタリー集 付録 より引用
「善意からの排除」の話、そしてもっと「自己陶酔的で身勝手なデリカシーの持っていきどころ」を描きたかった、とも話しています。
これ、すごくよくわかります。
最近「多様性」ってすごくいうけど、多様性の幅、めちゃくちゃ狭くないですか?
例えば、性的マイノリティとされるLGBTQ。おしゃれでいけてて、なにかクリエイティブの才能があったり、トークがうまくてカミングアウトしてる人たちだけを LGBTQ として受け止めていませんか?
当然だけど、普通に誰にも言わず会社勤めしてる人たちだってたくさんいるし、カミングアウトしてない人もたくさんいる。あなたのデスクの隣の人もそうかもしれない。いちいち言っても言わなくても誰でもそのまま暮らしていけるのが多様性を認めることだと私は思います。
なんか、多様性というわりに、「キラキラしたものを持っているマイノリティだけが認められる社会」になっていってて、むしろ多様性から遠ざかっている気がする。
もう一度聞きたい。
パラリンピックは感動の祭典で世界中で放送されるのに、ミゼットプロレスは放送禁止なのはなぜですか?
「パラリンピックの人たちはアスリートで努力しているから」と答える人もいるのかな?
そんな人達こそ、このDVD見てほしい。どれだけミゼットプロレスの人たちがトレーニングしているか。
エンタメ性がだめなの?障害を持つ人は真面目に頑張らないとっていう考えの方が変じゃない?
「小人を笑い者にするなんてかわいそう」というけれど、小人プロレスのOBが再就職していたのは 全日本女子プロレスの合宿所です。誰よりも、小人プロレスのことを大切にしています。
そして合宿にきた新人たちが真剣にアトムさん達にプロレスについて相談します。
「プロレスの見せ方は?」「『笑わせ』てるのか『笑われ』てるのか?」
質問に真剣に答えるOB達。これこそ本当に障害者が参加できている社会だと私は思いますけど。
あと、ミスター・ブッタマンさんの復帰戦。優待券に印刷された小人プロレスラーの写真。戦っているレスラーも、それを見つめているOBたちの姿もいいんですよ。見てると胸が熱くなってくる。
私は、合宿所での質問シーンと、復帰戦のシーンが一番好きだったなー。
ミゼットプロレスの現在
これを見た後に「ミゼットプロレス見に行きたいなー、やってるのかな?」と思って調べてみたら、なんと!!!
ミスター・ブッタマンさん、現役でした!!
すごい!!
今年、小人プロレスラーのプリティ太田さんと、小人プロレスを再生するためのクラウドファウンディングに挑戦し見事成功していました。
こちらが現在の小人プロレスのレスラー、ミスター・ブッタマンさんと、 プリティ太田さん です。
ドキュメンタリーの中で「もう逃げない」とお話されていましたが、本当にここまで長年頑張って来られたなんてすごい!
いつか、会場に見に行こうと思います。
2022年5月21日追記 新団体 立ち上げのニュースが話題になっています!すごい!
クラウドファウンディングも成功し、新団体の立ち上げや興行も大成功だったようです。
このご時世に現地観戦チケットは完売だそう!すごいですね。
ブッタマンさんもしっかり現役で活躍なさっているようです。
新団体についての記事はこちら→身長142センチのレスラーがリングに上がる…低身長症の「こびとプロレス」が新団体旗揚げ
新団体 椿ReINGz(ツバキリングズ)公式ホームページはこちら
新団体 椿ReINGz(ツバキリングズ)の広報Twitterはこちら
おまけ DVDの付録(ブックレット)、対談集が面白すぎる
このDVD、映像本編が面白いのは当然のことながら、付録の対談集もめちゃくちゃ面白いです。内容が濃い。ゲストのセレクトが秀逸。
森監督と各回のゲストで、それぞれのドキュメンタリーについて対談しています。
そのゲストとは
ミゼットプロレス伝説~小さな巨人たち ~
⇒プロレスラー 長与千種さん
職業欄はエスパー
⇒ 芸人 東野幸治さん
1999年のよだかの星
⇒デヴィ夫人
「放送禁止歌」~唄っているのは誰?規制するのは誰? ~
⇒ミュージシャン 小室等さん
森監督のファンでもあり野次馬根性丸出しで色々と話を聞きまくる東野さん、デヴィ夫人との意見の相違にきちんと意思表示をする森監督、おそらく一番放送できない小室等さんとの表現についての対談、読んだ後、背表紙を見ると「NOT FOR SALE」の文字が。たしかにこれだけで売るのは危険かも。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
また、DVDご覧になった方はぜひ感想をコメント欄に書いてくださると嬉しいです!
ちなみに、森監督の作品、オウム真理教のドキュメンタリー「A」「A2」、佐村河内守さん夫婦の密着ドキュメンタリー「FAKE」は、見放題メニューではありませんがamazon Prime videoでレンタルして見ることができます。おすすめです。
ゴーストライター騒動後の佐村河内守夫妻密着ドキュメンタリー、「FAKE」を見てみたい方はこちら
地下鉄サリン事件から半年。オウム真理教信者であり続けることに迫った「A」を見てみたい方はこちら
「A」から3年後。オウム排斥運動に関わる住民と信者の関係性を描いた「A2」を見てみたい方はこちら
それでは、また。双六問屋でした。
森達也さんが書いた、皇室を巡るタブーに一石を投じる「問題小説」、千代田区一番一号のラビリンス面白かったです。こんなこと書いていいのかなってドキドキしながら読みました。今のところ、発禁処分にはなっていません。なかなかブックレビューはされないようですが。
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